海外に比べ日本の住宅の資産というものは非常に低く評価されています。欧米だと築100年の住宅がヴィンテージとして新築と変わらないような高値で売買されているのに対し、日本では築30年も建てば住宅の価格というのは0円としての価値にしかなりません。家を建てるということは日本では資産形成にはならづ、逆に資産を失うという悲しむべき状況です。
日本の住宅の平均耐用年数は約30年・・・
これはアメリカの44年、イギリスの75年に比べてはるかに短命です。
1950年代に建てられた住宅ストックはわづか218万戸、住宅全体のストック数が5400万戸といわれていますからいかに古い家が少ないのかというのがわかります
欧米ではだいたい築50年以上の住宅は全ストックに対して2割程度、日本は5%を切っているんです。いかに戦後スクラップアンドビルドで進んでいた住宅施策が間違っていたのかと考えてしまいます。
築30年で解体してしまう家・・・
この家はもう住めない家なのでしょうか?
確かに30年も経てば水回りの設備などは老朽化し、壁紙などはかなり汚れが目立っている状況だとは思いますが、住めないか?と問われたら、ほとんどの人は手直しさえすればまだまだ住むことはできると考えるのではないでしょうか。
住宅に使われている構造材(木材)の耐久性はどうでしょうか?
屋久島の縄文杉は樹齢7000年以上といわれています。地球上の生物の中で一番長生きしているのが【木】なのです。そしてあまり知られていませんが伐採されてからも長生きするのが木の特長なのです。
世界最古の木造建築「法隆寺」の1300年以上たったヒノキの柱にカンナがけすると、真新しい檜と同じ爽やかな香りがしてくるのだそうです。
一般に、鉄やプラスチックなどの材料は、新しい時が一番強く、古くなるにつれて弱くなってしまいます。逆に木材は、時間とともにどんどん強度を増していきます。樹齢100年のヒノキの場合、伐採されてから100年後に最も引っ張り強度・圧縮強度が増しているとの研究報告があります。
しかし日本では、木材が最も円熟する前の段階で捨てられているのです。
民家や町家は解体され、その多くが廃棄されているのです。戦前、民家や町家が今よりもたくさんあった時代は、新築する時、家をリフォームする時に、「古い木材を再利用する」という事はごくごく当たり前の事でした。
そこには「モノを大切にする」「もったいない」という日本人ならではの習慣がありました。古い民家を解体したり、改修したりすると何度も使われた形跡のある古材が、梁や桁に再利用されています。「使えるものは繰り返し使う」先人の残した知恵や文化は本当に素晴らしい事だと思います。
しかし、高度成長期に入り、時代は「モノを大切にの時代」から「捨てる時代」になりました。解体された民家や町家から出る価値ある古材は、チップにされたり燃やされたり埋められたりと廃棄物として処分されてきました。
そして再び、環境問題が社会的に叫ばれるようになり、「モノを大切に」の時代がやってきました。
私たちは過去に戻ることはできません。しかし、先人たちの教えを今に活かすことはできると思います。
住宅の平均寿命を延ばす努力と共に、解体された木材=古材を産業廃棄物として処分するのではなく、住宅の構造材として再利用する・・・そんな手法でアプローチするのもいいのではないでしょうか?